用語説明

エージェント

エージェント(Agent)とは元々「代理人」という意味であり,一言でいえば「依頼された何らかの仕事を自律的に遂行するシステムまたはプログラム」のこと。特に,最近のインターネットやパソコン通信の普及によって,ネットワークを通して簡単に情報を入手したり,電子取引を行ったりすることが可能になり,電子的な仮想社会がネットワーク上に構築されようとしている。このような電子仮想社会において,人間の代理をしたり支援をしたりする機能としてエージェントが注目を浴びている。エージェントには,次の特徴がある。

①自立(エージェント自身の価値判断による処理),②協調(エージェント間での利害対立や矛盾に対し,全体の目的を基にすり合わせを行う),③学習,④知識の蓄積(処理の仕方を学習し,処理を通じて得られた情報を知識として蓄える)。

さらに,「移動エージェント」とは,ネットワークを通して遠隔地に送られて実行されるプログラムのことで,遠隔地で自分の代理として働くことからエージェントと呼ばれる。この意味のエージェントの記述言語として,NTTも出資している米国のベンチャー企業,General Magic社が開発したTelescriptテレスクリプト)が注目を集めている。Telescriptと携帯情報端末を利用したコミュニケーションサービスが,日本でも1996年NTT,SONY,AT&Tの合弁会社であるNTTファン企画(株)によって開始された。「知的エージェント」は人間を支援することに重点をおいたもので,自律的に動作するシステムのこと。あらかじめ与えられた知識を基に,そのときの状況に応じて適切な処理を実行する。応用としては,ネットワーク上の情報の探索をするエージェント,電子メールやニュースの仕分けをするエージェント,人間とコンピュータの対話の支援をするエージェント,などが考えられる(図1)。

◆ 《秘書エージェント》

エージェントが実現する機能およびその目的に着目した見方で,人間の代理をするソフトウェア。ユーザから委託された何らかの仕事を代行したり,ユーザの仕事を支援したりするソフトウェア。

◆ 《知的エージェント》

自律的に状況を判断し,問題解決のプランを作成して実行できるようなシステム。通常のプログラムのように問題解決のための処理方法が決まっているのではなく,与えられた仕事と外部の状況を把握したうえで,そのときの状況に応じた実行プランを生成して実行する。また,他のエージェントと協調して仕事ができる,という点を強調する場合もある(図2)。

◆ 《移動エージェント》

ネットワークで接続されたコンピュータ群の中で,コンピュータ間で移動して実行されるスクリプト(処理の手順およびデータを記述したプログラム)のこと。送付先のコンピュータの上で送付先のコンピュータの“代理”として動作する。

移動エージェントを記述する言語として代表的なものに,米国のベンチャー企業であるGeneral Magic社が開発したテレスクリプトTelescript)がある。またJavaアプレットと呼ばれるプログラムをサーバから端末にダウンロードして実行できるので,移動エージェント記述言語の一種ということもできる(図3)。

図1_エージェントの概念図2_知的エージェント図3_移動エージェント