用語説明

DCT(離散コサイン変換)

Discrete Cosine Transform

信号の冗長度を削減するために用いられる直交変換の一種。複数の画素をまとめた画素ブロックに対して変換を施し,DCT係数の領域で量子化ハフマン符号化等の符号化処理を行う。図1に8×8画素/ブロックの場合を示す。変換によって得られる64個のDCT係数は直流成分(ブロックの画素平均値)から低周波成分,高周波成分までを表すが,画像の統計的性質並びにDCTの性質により,変換係数のパワーは直流成分と小数の低周波成分に集中する(図2)。

一方,視覚特性上からは,高周波成分DCT係数の画質への影響は少ないことが知られている。そこで,高周波成分のDCT係数を粗く量子化したり,切り捨てたりすることにより,ビットレートを低減することができる。

◆ 《ウェーブレット変換》

DCTと同じく直交変換の一種。ただし,DCTのように完全にブロックに閉じた変換ではなく,低域の基底関数は隣接ブロックにオーバラップし,互いに重なり合っている。このため,DCT等のブロック直交変換に比べ,ブロック歪みが目立たない。また,高域の基底関数の幅が狭く,高域雑音が拡散しないためモスキート雑音も目立たないといわれている。

◆ 《モスキート雑音》

エッジと平坦部の境界付近で発生する歪みDCT係数を粗く量子化したり切り捨てることにより,エッジに沿った平坦部の再生信号が波打つような現象が起きる。動画像符号化では,この波打ち現象が時間的に微妙に変化しながら現れるため,蚊が飛んでいるような目障りな歪みとなる。

◆ 《ブロック歪み

DCT等のブロック直交変換を用いた符号化に特有のブロック状雑音。変換係数を粗く量子化することによって,ブロック間で信号の連続性が打ち切られることが原因である。

図1_8x8DCT図2_DCT変換のイメージ