用語説明

ACTS

Advanced Communications Technologies and Services

高度通信インフラ構築とそれを利用したマルチメディアサービスの早期導入を目的としたACTS,IT(Information Technologies)およびTelematicsの3つの研究開発支援プログラム。フレームワークプログラムの中で情報通信分野の研究開発を具体的に推進している。欧州委員会第13総局(電気通信情報市場および研究開発部門)が管理運営し,個々のプロジェクトの研究費の50%までの財政支援を行う。

ACTSは,1985~1995年に実施されたRACE(Research and Development in Advanced Communications Technologies)プロジェクトの後継プロジェクトでもあり,RACEで得られた様々な結果を実際に応用してグローバル情報社会(GIS:Global Information Society)を実現し,ヨーロッパ企業の競争力強化,欧州経済の継続的な成長ひいては雇用,新労働市場の創出およびTENs(Trans-European Networks)による単一市場の競争力強化を目指している。

また,ACTSプログラムは,第4次フレームワークプログラムの1つであり,高度通信基盤およびサービスの開発を促進する。ITで情報通信の要素技術の研究開発を行い,ACTSで高度情報通信インフラや各種ネットワークサービスの実現を先導し,Telematicsで教育,医療等のユーザアプリケーションの実現,展開を図るという関係になっている。

◆ 《コンサーテーション》

ACTSでは,プロジェクト間の情報交流を促進し,一貫した研究開発を進めるためコンサーテーション(協調)活動が進められている。

コンサーテーションには,(1)ドメイン,(2)チェインの2つの仕組みがある。

(1) ドメイン

技術分野ごとの協調活動であり,共通の関心事項に関する情報交換やワークショップの開催等の活動を行っている。

(2) チェイン

技術分野を超えてプロジェクトが連携を図り,要素技術開発からエンドアプリケーション実現への到達の方策,あるいは社会的影響等をアピールするための活動。

◆ 《ナショナルホスト》

ACTSの研究開発プロジェクトで通信技術,またはサービスのフィールドトライアルが義務づけられており,これらの実施のために必要となる各種プラットフォームを提供するための仕組み。当該国の通信キャリア,大学等が協力してプロジェクトに対して以下の支援を行う活動。

 ・ 既存のネットワークあるいはテストベッドへのアクセス

 ・ 実験に必要な諸設備の提供

 ・ ユーザコミュニティへのアクセス

 ・ プロジェクトの進める実験および関連会合のための研究スペースの提供

 ・ WWW等による情報流通

各国におけるネットワーク提供上の諸問題を横断的に検討するためのナショナルホストフォーラムという会議が組織されており,EU諸国のほか,アメリカ,カナダ,日本(NTTが参加)等の23のナショナルホストが参加している。

また開発プロジェクトに関しては,日本からは現在4機関が6つのACTSプロジェクトに参加し,NTTはAWACS(ATM Wireless Access Communication System;ATMワイヤレスアクセス方式),PANEL(Protection across Network Layers;ネットワークレイヤのプロテクション方式)およびRE-FORM(Resource Failure and Restoration Management in ATM-based IBCN;ATM網管理システム)の3プロジェクトに参加している。

◆ 《IT(Information Technologies,通称:ESPRIT)》

欧州委員会第3総局(産業部門)が推進する研究開発支援プログラム。ソフトウェア技術,半導体の設計,製造,実装技術,マルチメディアシステム,マイクロプロセッサ,高速コンピューティング,エレクトロニックコマース等の情報技術全般に関する基礎的な研究開発を行っている。

◆ 《TELEMATICS》

TELEMATICSプログラムも,ACTSと同様,欧州委員会第13総局が推進する研究開発支援プログラムの1つ。ACTS,ITと異なる大きな特徴は,マルチメディアサービスを公共的な分野(官庁等公共機関,交通,教育,図書館,都市,医療,福祉,環境等)に適用することを目的にしている。

一例を挙げれば,郵便業務,調達,IPR,観光,税関業務,統計調査,美術館等の公共業務から,航空管制,通行料金徴収,交通渋滞管理,鉄道管理,港湾施設の管理等の交通関連業務,さらには語学教育,図書館のネットワーキング化等の教育関連,テレワーキング,失業者対策等の労働問題や医療データベースのネットワーキング化等の医療業務に至るまで,非常にきめ細かくプロジェクトが策定され実施されている。

◆ 《INFO2000》

マルチメディアコンテンツ開発を目的にした欧州委員会第3総局が支援する研究開発支援プログラム(1996~1999年)。印刷出版から電子出版への移行およびインタラクティブなマルチメディアサービスの開発に重点を置いている。