用語説明

シンクロトロン放射光(SOR)

Synchrotron Orbital Radiation

高エネルギー電子が磁場で曲げられる際に発生する赤外線からX線にわたる強力な電磁波で,1947年にジェネラルエレクトリック社(米国)の研究者たちによって発見された。この光は,シンクロトロンと呼ばれる電子の加速器で電子を光の速度に近づくまで加速し,これを磁石の力で急激に曲げるときに発生する電磁波である。

SORは高い輝度とX線領域から遠赤外領域に至る幅の広い連続スペクトルを持っており,それまで地上で得ることのできない光であったことから,「夢の光」として科学者の注目を集めた。また,電子蓄積リング内の高真空中で発生するため,他の不確定な擾乱が少なく,したがって波長や強度が正確に求められることも大きな利点である。さらに高真空中からの放射であるため,照射される物質を汚染することもない。

SORは通常電子蓄積リングと呼ばれる装置により発生させる。本装置はシンクロトロンと呼ばれる高エネルギー電子加速器と同様な構造をしており,加速空胴の高周波電界を用いて電子を数百~数千メガ電子ボルト(MeV)にまで加速する。このときの電子の速度はほぼ光速に近くなっている。その後,電子はリング上軌道を長時間周回しながらSORを発生する。